立冬を迎えた今日、朝の光を浴びた理科会館前の木立の中に、冬の花、「山茶花」を見つけました。
「ようやく咲き出しましたね、…さ・ざ・ん・か。」
後ろから校務員の方の声。
「でも、この山茶花は少しかわいそうなんですよね。」
「えっ、どうしてですか?」
「ほら、すぐ隣にこんな大きな桜の木があるでしょ。おそらく、土の中では負けちゃって根を張ることができないでいるんじゃないかと・・・。その証拠になかなか幹が太くならないんですよ。いつも心配で・・・。」
言われるまで、気がつきませんでした。
確かに、植樹されたのは、「皇太子ご成婚記念」の平成五年、かれこれひと廻りも前のこと。そのわりに細々とした幹が、背の低さが、その歳月の重みを感じさせません。
「でもねえ、また今年もこんなにかわいい花をつけてくれて・・・よかったわ・・・。」
『寄らば大樹の陰』などというのとはまったく違う。
そんな狡猾で、卑屈で、他力本願を決め込もうとする態度では決してなく、どんなに虐げられても、もっとも厳しい季節の中にあっても、春の花以上の強さをもって凛と咲き出したこの「山茶花」。
花にはエールの拍手を、そして、その花のそうした有り様を思いがけず教えてくださった校務員の方には感謝の気持ちを、心の中でそっとおくることにいたしました。