さすがに梅雨空ゆえ、「夜の星」とはいきませんが・・・
時に、手元の単語帳や文庫本から目を離して、車窓の風景を眺めてみてはいかがでしょうか。
今なら、久我山駅からお隣の三鷹台駅にかけて、みごとな野生の紫陽花が波打つように群れ咲くのを見ることができます。
ただ、この梅雨の風物詩であるはずの紫陽花ですが、意外にもあまり古歌にとられていないのです。
その証拠になんと「古今集」から「新古今集」にいたる八代集には一首も見当たりません。
「万葉集」四千五百首を見渡しても、わずか二首だけ。
実を結ばぬ花。
色もまたうつろいやすき花。
そんな負のイメージがつきまとうからでしょうか。
それでも、古都鎌倉では、「紫陽花寺」の異名をもついくつかの古刹がこの時期多くの人々を集めています。
この世の無常をすべて引き受けるかのように、楚々と咲く紫陽花ほど雨に似合う花はありません。