高校1年生を対象とした《能楽》教室も、いよいよ「能装束」体験の日を迎えました。
その命ともいうべき「面(おもて)」や、「蔓帯」、「扇」といった小物類に至るまで、なかなか直接触れることなどかなわぬ代物ばかりですが、ありがたいことに、卒業生である能楽師高橋忍さんのおかげで稀有な体験を積むことができました。
本日は、その高橋さんと着付けのモデル役として同じ金春流の山井綱雄先生のお二人が来校され終始なごやかな雰囲気のうちに進められました。
女子部高校一年《能楽》講座
「能楽:能の装束をコーディネイトしてみよう」
講師:金春流能楽師 高橋 忍先生 山井 綱雄先生
なお、このたびの能装束のテーマには、女子対象らしく『羽衣』が採択されました。
秀麗なる富士と見事な白砂青松の景観を今もたたえる三保の松原を舞台とした『羽衣伝説』。
この物語にもとづいた能のシテは、いわずと知れた、まさにこの世のものとは思われぬほどの美しい「天女」。
はたして、そんな「偽りなき」天上界から舞い降りた「天女」の装束を、久我山の撫子らは、どんなふうにコーディネートしていったのでしょうか。
まずは、もっとも肝心な「面」の選択から。
数ある候補の中から多数決で選ばれたのは、目鼻口のまとまった若い女性の「面」でした。
続いて、大切な「羽衣」もこれまた天女にふさわしいものが選ばれました。
また、ブラウスに相当する「箔」や・・・
下半分しか目に触れない「腰巻」は、若い女性には必須の「色」である「紅(いろ)」が入ったものがきちんと選ばれていました。
その他、「かずら帯」から「扇」まですべてが決まり、いよいよ着付け段階の実演へ。
そして最後に、 「天女」の象徴である「天冠」をかざしたところで・・・
・・・生徒たちのすばらしいコーディネイトに天女も感涙にむせび…(笑)
そして最後には、有難いことにその装束を身にまとって『羽衣』の一節を披露。
朗々と響く歌声と美しい舞い姿に、みんなの目は釘づけとなりました。
★ 『羽衣』 シテ 山井 綱雄 地謡 高橋 忍 ★
最後に、山井先生から…
「…4年後には、オリンピックが東京で開かれることもあり、
多くの方々が外国からいらっしゃることでしょう。
そうした訪問者の『日本ってどんな国?』、『日本人って?』といった疑問に対して
明確にこたえられる人が少ないことが懸念されます。
そんなとき、この国の豊かな文化について
自分自身が体験し感じたことを
自分の言葉で
胸をはって説明できるような
そんな人であってほしいと思うのです…」
示唆に富んだお言葉を頂戴してお開きとなりました。