今年もまた、本館の前庭にたくさんの「捩花(ねじばな)」がその名の通り身をよじるようにして花をつけ始めました。
例年、「夏至」の頃からその存在が芝生の上に目立ち始め、二十ほどある花房が先端まで開花するといよいよ梅雨が明けるといわれています。
別の名を「もぢずり」。
みちのくのしのぶもぢずりたれゆゑに
みだれそめにしわれならなくに 河原左大臣 『古今集』
百人一首にも採られた由緒あるこの花も、今ではじきに芝とともに刈られてしまうはかない存在です。
とはいえ、螺旋状にまっすぐ上へ上へと伸びゆく様は、なにより「健気(けなげ)」で、同時に「幼気(いたいけ)」でもあります。
蒸し暑さも手伝って、どこか落ち着きに欠けることの多い今こそ、歩みを止めて、足元のこうした小さな変化にも心寄せるゆとりを大切にしたいものです。