高校2年生対象に行われている恒例の「歌舞伎教室」。
今年も、国立劇場(半蔵門)主催の第八七回歌舞伎鑑賞教室に足を運びました。
六月の演目は、人形浄瑠璃から歌舞伎に移された〈壺坂霊験記(つぼさかれいげんき)〉。
病気で失明した夫の目が治るようにと日々祈願を欠かさないお里(さと)と、女房の真心を知ってあえて自ら命を絶とうとする沢市(さわいち)。こうした夫婦の深い情愛と功徳に応えるように、最後は霊験あらたかな観世音が姿をあらわし、沢市の目を開かせるとともに二人の寿命をも延ばしてあげるという『万歳(まんざい)』なおめでたいお話です。
この本編に先立ち、「歌舞伎のみかた」では、女方の化粧や着付けの一部始終が披露され、その後生徒代表が舞台に上がり、実際に着物を羽織ってしずしずと歩く体験の場も用意されていました。
さて、病気平癒といえば、まず薬師如来が浮かびますが、この観世音菩薩もまた大きな慈悲の心で人々を救済する仏様として有名です。
通常、慈母観音・子育て観音などと呼ばれ、そこには優しい「母なるもの」を感じさせます。
本日、クライマックスの「第三場:谷底の場」に登場した観音様には、子役が登用されたこともあって、そうした優しさに、えもいわれぬ可愛らしさまで加わり、そのありがたみはよりいっそう尊いものとなったようでした。(笑)
そして、なにより本当に大切なものは、心の眼にこそ映ずるものであることをあらためて教えていただいた一幕でした。