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変わらぬもの@高校2年歌舞伎教室.

投稿日2014/6/10

  「…見目も形も相当に変わってしまいましたが、
   変わらないのは、互いの心…」
 
  三十七年間という長いとしつきを経てようやく再会を果たした「ぢいさん」と「ばあさん」。
  老いてしまった身の上をしきりに嘆く「ぢいさん」に、
  いちだんと寄り添うようにしてつぶやいた「ばあさん」の返しでした。
 
  そんな「ぢいさん」もなにかにつけ自分の「鼻」を触る「癖」は昔のまま。
  一方、か細かくひよわだった庭の桜は、
  今や幹太く老練なる桜木に姿を変えて
  二人を祝福するように花吹雪をもって出迎えていたのが印象的でした。
 
  
毎年恒例となった高校2年生対象の「歌舞伎教室」。
今年は、国立劇場が主催する「第八十五回」の「六月公演」として新作歌舞伎「ぢいさんばあさん」を鑑賞しました。
古典のそれに比べ、わかりやすい筋書きも手伝って、例年以上に「歌舞伎」というものに親しみをもてたのではないでしょうか。 
 
この「ぢいさんばあさん」は、明治の文豪・森鷗外の短編小説を、昭和の劇作家・宇野信夫が戯曲化し、戦後の一九五一年に初めて上演されたものです。
おしどり夫婦と評判の武士の伊織と妻のるん。るんの弟の代わりに京都へ単身赴任した伊織はささいなことで同僚を斬って死なせてしまい、越前にお預けの身となってしまいます。一方、るんも病気で子を亡くし、筑前に奥女中として奉公。
そして三十七年後、二人はかつての住まいである江戸にて再会を果たすという物語です。
 
上記に加えて、心打たれたシーンは数知れず…
 
留守宅をまかされていた若夫婦の「久弥」と「きく」が、いよいよおじ夫婦の再会に際して、とっておきの座布団を心をこめつつもさりげなく置いて立ち去るシーン。 
再会後に亡きわが子の墓参りとともに、自分たちの運命を大きく狂わせることになった敵役の「下嶋」の墓にも詣でようと「伊織」自身が提言するシーン。
 
メールやネットの普及により、「相手」がどこで何をしているのかをリアルタイムで確認し合える今の時代にあって、それとは正反対に、場所も時間もはるか遠く隔たってしまったにもかかわらず互いの心を信頼し合うような、世の中には「変わらぬもの」があることを、今日の舞台はなにより教えてくれたような気がします。
 

 
  …出がけに校内で
     ふと足元へ目を向けると…

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