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6/5 「科学者1年生からのメッセージ」@高校1年特別講演.

投稿日2013/6/6

 
 
おそらく、現役の生徒諸君にとっては、たいへんまぶしい存在に映ったことでありましょう。
 
それもそのはず、今や新進気鋭の科学者として、薬学から理学へとその対象の裾野を広げながら、芸術的ともいうべき姿勢をもって研究に明け暮れる偉大な「先輩」の肉声にふれることができたのですから・・・。
 
       講師  石井 健一 氏  (平成14年度卒業生:第54期)
    東京大学 大学院 理学系研究科 生物学専攻 細胞生理化学研究室 勤務
    薬学博士 平成23年度「東京大学総長大賞」受賞
 
 
◇ 私は… (自己紹介)
 
みなさんより13歳年上の久我山OBです。卒業後、東京大学へ進み、大学院にて薬学の博士号を取得し、現在は理学部の科学者1年生といったところです。


 
懐かしいスナップです。みなさんと同じようにここから私の中学高校生活がはじまったのでした。
今、中学高校時代をふりかえってみるに、勉強面では、得意な科目があったということよりも、「好きな科目」があったことで頑張れたような気がします。また、部活動では硬式テニス部に所属していましたが、そうして打ち込めるものがあったことも当時の自分を支えてくれていました。
とはいっても、高校生になったころ、周囲の友の変化に自分だけが取り残されたような弧絶感を覚えたこともありました。そういうときは、多摩川のほとりで寝転がって空を見上げたり、本を読んだり、好きな映画を観たりして過ごしていました。また、友人や先生に相談したこともありました。
そうした中で、その後の生き方に大きな影響を与えることとなった運命的な映画作品と出会いました。それは、サルを媒介して蔓延していくウィルスと格闘する科学者たちの物語だったのです。
そして、科学者へのあこがれから東京大学をめざすことになるのですが、受験勉強は基本的に塾に通うのではなく、学校の先生を「使い倒す」ようにしていました。なぜなら、塾の先生とちがって、学校の先生は、一人一人の生徒の性情をよく理解したうえで個別的な指導をしてくれるからです。また、授業を聴くことにとどめずに、自分で問題を解いたり暗記したりすることを課していました。
そして、そうした勉強も、ただやみくもな努力を重ねるのではなく、長期、中期、短期と計画を立てて戦略的に進めていくようにしました。また、目標というものはその時点での得意不得意や学力で決めてしまうのではなく、あくまで目標に合わせて学力を伸ばしていくようにしなければならないと実感したのもこのころでした。
その後、大学に進んでみたものの、周囲にはとても太刀打ち叶わぬ優秀な友人が多く、自信をなくしてしまいました。しかし、だからといって、科学者になりたいという夢を捨てることはありませんでした。かえってその時、「勉強で負けても、科学研究では負けまい」と思い、教養学部の段階ではありましたが、研究室の扉をたたき無理やり科学者の見習いをしたのでした。
その甲斐あってか、大学院に進んでからは、朝から晩まで土日もなく好きな研究に没頭し、とても楽しい生活を送ることができました。結果、国際学術雑誌への論文や、学会での発表の機会も得られ、東京大学総長大賞や日本学術振興会育志賞をいただく栄誉にも浴しました。
 
◇ 東京大学ってどんなところ?
   ※ 薬学研究棟の様子を動画で紹介してくださいました
 
2年間の教養学部では、実に100以上の多岐にわたるさまざまな講座が設けられています。なんと「座禅」などもあるのです。
また、東大の研究設備は最新鋭のものが整っています。それに加え、大発見を成し遂げた教授陣や新たな分野を切り拓かんとしている若手の研究者や、高いモチベーションをもった同僚たちとともに切磋琢磨しながら、研究そのものにいそしむことのできる環境があります。その他、研究分野以外でも、それぞれの夢に向かい情熱を燃やす人たちがたくさんいる大学です。最近では被災地の支援ボランティア団体を主宰したりした人もいました。
 
 
◇ 科学研究の世界ってどうなってるの?
 
もともと「科学研究」というものは「自然哲学」を起源としています。ゆえに人が生きていく上で生じる疑問(問い)にある答えを見出していくことが「科学」の営みなのです。人はなぜ病気になるのか、その病気を治すにはどんな薬を作ればよいのか、そうしてうまれた薬をどのように使えばいいのか、・・・こうして「問いを立てる」ことから「答えを見つける」ことへつなげられれば、君も科学者になれるのです。
私は、薬学部において、「人はどうして感染症になるのか」という「問い」と取り組みました。これまではマウスなどの哺乳類を実験台とするのが常識とされてきましたが、あえて、カイコという昆虫を使って感染症の仕組みを研究してみたのです。その取り組みが功を奏して、とうとう新たな免疫経路を発見することに成功しました。そのことは同時に、新しい抗生剤の発見や開発につながりました。
そして、現在その研究の場を理学部に移してからは、社会性の強い昆虫であるミツバチの生態に注目しながら、そのコミュニケーション力の存在やスズメバチを撃退する「熱殺蜂球」の威力に注目してみたり、乾燥、高熱、放射線といったものに高い耐性を示す極限生物とされるクマムシもその研究対象にしています。
 
 
◇ 高校1年生へのメッセージ
 
勉強だけではなく、部活でも趣味でもなにかに打ち込むようにしましょう。さらにアンテナを広げるためにも外へ出るようにすることも大切です。また、この時期に自分の本当に好きなこと、やりたいことを考えてみることです。そのためには、自分と他人とはどこが違うのか、他人に負けないものはなんなのか、もう一度自分自身を見つめなおしてみる必要があります。
このことは、必ずや、受験のみならずその後の職業選択のモチベーションアップにつながるはずです。
 
   ~ 熱中できる何かを見つけ 自分の得意なものを伸ばして 夢の実現へ一歩ふみだそう ~
 
 

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