~ 「南庭」にて ~
澄み切った青天に、紅白に染まった早咲きの桜が、三一六名の門出を祝ってくれました。
「・・・今日で義務教育を終え、4月からはいよいよ自ら選んで学ばんとする高等学校の段階に入ります。
そのためにも、今この切り替わりの瞬間を大切に過ごして欲しいのです・・・」 (学校長式辞より)
奇しくも、卒業生が国語の時間に学習した最後の作品は、「ハレ」の時空間を謳い上げた次のような詩でした。
峠 真壁 仁
峠は決定をしいるところだ。
峠には訣別のためのあかるい憂愁が流れている。
峠路をのぼりつめたものは
のしかかってくる天碧に身をさらし
やがてそれを背にする。
風景はそこで綴じあっているが
ひとつを失うことなしに
別個の風景にはいってゆけない。
大きな喪失にたえてのみ
あたらしい世界がひらける。
峠にたつとき
すぎ来しみちはなつかしく
ひらけくるみちはたのしい。
みちはこたえない。
みちはかぎりなくさそうばかりだ。
峠のうえの空はあこがれのようにあまい。
たとえ行手がきまっていても
ひとはそこで
ひとつの世界に別れねばならぬ。
そのおもいをうずめるため
たびびとはゆっくり小便をしたり
摘みくさをしたり
たばこをくゆらしたりして
見えるかぎりの風景を眼におさめる。
「・・・三年前、入学式で目標とすべきことを三つあげました。
まずは、国学院の精神をもって、自然をはじめ、自分を生かしてくれているありとあらゆる存在への感謝の気持ちを大切にしてほしいということ。
次いで、多くの友達を作ること。友の存在は、体にたとえれば、頭でもなく、手でもなく、目立たぬところで自分を支えてくれている足裏のごときものかも知れません。
そして、いうまでもなく日々努力を重ねて学習力を身につけること。
あらためて、それらがこの三年間で実現に達したかどうか省察してみてください。
最後に、保護者の皆さま方へ・・・
これからは、親として、あえて「手」や「目」をはなして、そのかわり「心」はなさず見守っていくようお願いいたします。・・・」(学校長式辞より)
その後、粛々と式は進み・・・
M・Fさんが在校生代表として、「文武両道の姿を先輩方から学びました。その姿勢をわたしたちもしっかり継承していきたいと思います。」と「送辞」を述べれば、前生徒会長のK・O君が、卒業生を代表して「…進級するにつれ、社会に触れる機会が多くなってきました。その中で、厳しく指導されてきたことの意味がようやくわかってきたのです。今や呼吸するように挨拶も当たり前にできるようになりました。・・・とはいえ、この節目の時に、一人一人思うところは違うでしょう。これからも各自の信念を持ち続けていきたいと思います。」と力強く「答辞」を読み上げました。
~ ♪ 見上げてごらん 夜の星を ♪ 卒業生から感謝の気持ちをこめて ~
式後、ひとりひとり壇上にあがって、校長先生から直に「証書」を手渡されました。
~ 花道をゆく ~
この日、後輩たちのみならず、卒業生たちの前途を祝うようにやわらかな新芽の柳が風にゆれ、池の面にソメイヨシノが枝垂れていました。 (井の頭公園にて)