冬休みの課題である「新俳句」の創作。
一人あたり六句ずつ、身近な生活のひとこまを「五七五」に切り取ったすばらしい秀作から、迷作、珍作まで、今年もバラエティに富んだ作品がたくさん集まりました。
その中から、担当する男子部中学3年生の作品を一部ご紹介いたします。
【家族編】
● 小6の妹のために家出する
…受験目前。妹思いの「お兄ちゃん」ですね。外出を「家出」としたところが実にいい。
● 年忘れ祖母は自分の歳忘れ
…笑えるような、笑えぬような。「年」と「歳」の見事な使い分けに脱帽です。
● 巳の年家では親が睨んでる
…自立の道はまだまだ遠い。睨まれた「蛙」くんの「飛躍」に期待します!
● 餅の椀祖父母が見える食べるたび
…「孫」のためについたお餅。おじいちゃんおばあちゃんの味がする日本一のお雑煮だ!
● 特売へ早足の母師走かな
…教師でもなく、法師でもなく、師走に走るは、たくましき母なり。目指すは赤札ついたあれやこれ。
【正月編】
● おもちゃ屋で折り目でわかるお年玉
…作者の細かい観察眼に感心。三つ折りのお札はなによりの証拠ですね。
● 大掃除ベッドの下からくつ下が
…匂い立つ秀作。「下」の繰り返しもまた絶妙です。ところでその片っぽは何処へ?
● 箱根路は氷点下なのに炎天下
…今年もさまざまなドラマが繰り広げられた箱根駅伝。沿道から応援したのかな?
● お弁当おせちの残りつまってる
…まあまあ、そう文句を言いなさんな。お母さんにも本当の「正月休み」をあげましょう!
● 初詣初めの試練お手水場
…「あなたはエライ!」と思わず叫んでしまった秀句。君ならどんな試練も乗り越えられるよ。
【季節編】
● 足の冷え気付かぬ今日の読書かな
…愛書家の作者ならではの一句。ここまで夢中にさせるその本は何なのか興味津々。
● 一日中こたつの中に借り暮らし
…前世は猫?なかなか脱することのできない様子を「借り暮らし」と表したところがいい。
● 晩秋に一人寂しく守り柿
…これまた、木守り柿を一人寂しく見上げている作者の姿が想像されて郷愁を覚えます。
【その他】
● 飛行機が空の道路駆けぬける
…日の光にキラリと輝く機体が一気に空を二分していく様は、だれしもしばし見惚れてしまうもの。
● なべの中菜は上がって肉落ちる
…育ち盛りの作者にとっては、お目当てはもちろん「肉」。確かに、蓋する前と後とでは様子はがらり。戦争だ!
● バーゲンで買ったものほど後でゴミ
…前掲の「特売へ早足の母師走かな」への返句のようですね。(笑)
● お金ではけっして買えないこの三年
…中学卒業まであとわずか。これまでの歳月をさらに価値あるものとするためにも有終の美を飾れ!