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閑話:人が取り持つ「えにし」.

投稿日2022/11/1
2022.10.31 稲村ヶ崎にて 江ノ島と富士のシルエットを望む

  
 その人とは、ほかならぬ今はもうすでに鬼籍に入られた「先達」のこと。
 2年前の正月、「箱根駅伝」で活躍する卒業生に自宅からあらん限りの力を振り絞りエールを送った、その数日後、ついに天に召された陸上競技部の元監督。
 
 今年もまた、いよいよ全国高校駅伝の東京都代表を決する大一番を目前に控え、昨日、その「先達」が眠る鎌倉へ近況報告を兼ねて墓参に出かけた、その時…。
 
 「先生、こんにちは!」
 
 お花と供物を手に、やおら墓前に向かおうとしたその矢先、後ろからひときわ若い元気な声が。
 振り返るとそこには、昨年のキャプテンY .I君の、彼もまた驚きを隠せない様子ながらも底抜けな笑顔があった。
 
 「今日が唯一の(練習が)オフだったので…
  これから始まる『全日本(大学駅伝)』、そして『箱根(駅伝)』の前に、
  是非ともお墓参りをしたくて…」
 
 その後、「先達」の好物だったコーラを手にした気のきく彼と墓前にしばし手を合わせる。
 
 少なくとも、私は知っているつもりでいる。
 ほかならぬ大学のトップチームにおける厳しい練習の積み重ねを。
 そうした日々の中で、滅多にない恵みのオフの日こそ、本当ならば少しでも身体を休め、ケアに努めて明日に備えたいであろうことも。
 
 それを押してでも、遠路はるばる「恩師」のもとを訪ねることを優先した彼の姿に胸が熱くなる。
 そしてそんな彼に、このタイミングで、しかもこの場で引き合わせてくれた「先達」による天からの粋な計らいについてもまた…。
 
 その後、彼と別れてのち、生前「先達」が大好きだった夕闇迫る鎌倉の海原に出てみれば、そこには形容しがたいほどの神々しい景色が、刻々とその豊かな表情を変化させながら広がっていた。
 
あらためて、合掌。
 
  

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