この時季に本館の前庭に目を凝らすと、実にたくさんの「捩花(ねじばな)」がその名の通り身をよじるようにしてのびているのがわかります。
今年もまた例にもれず、その存在が芝生の上に目立ち始めました。
なお、二十から三十ほどある花房が先端まで開花する頃になると梅雨が明ける目安とも言われています。
別の名を「もぢずり」。
みちのくのしのぶもぢずりたれゆゑに
みだれそめにしわれならなくに
河原左大臣 『古今集』
こうして、百人一首にも採られた歴史あるラン科の小花なのですが、今では雑草として芝とともに刈られてしまう運命にあるはかない存在でもあります。
いかなる辛苦に見舞われても、また心乱れるような事態に遭遇しても、その身をみずから捩るようにして、理想と目標を見失うことなく、諦めずに上を目指しつづけるその姿に、殊の外今年は大きな勇気を頂戴したような気がいたします。
また、折から吹きつける嵐のような今日の強風にも怯まず伸びゆく様は、その花言葉のごとく「健気」で「幼気」でもありました。