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「違う」ということ @ 高校1年《弁論大会》.

投稿日2020/2/17


  

 
 各クラスの予選を通過した代表、12名の弁士が個性豊かに持論を展開した高校1年『弁論大会』
 
 今年も、そのテーマは、身近な出来事から、政治、歴史、文化、哲学に至るまで、実に多彩な内容で聴く者を楽しませ、同時に我がこととして考えさせる内容が集まりました。

  
  『人間は一本の葦に過ぎず自然の中で最もか弱いものである。
  だがそれは、考える葦である。』   (パスカル)
 
 
 せわしく追い立てられるように過ぎゆく日々にあって、こうして時に歩みを止めてじっくりとものを「考える」ことは、より充実した生活をおくる上で大切なこころがけであることに相違ありません。
 
 
 
 ※ 以下、発表順にその要旨に所感を添えて…。
 
  

 
 1 女子 Y.I 生きにくい社会で楽しく生きるには
  
便利になり恵まれた今の世の中。それにもかかわらず、毎年2万人もの自殺者や数え切れないほどのひきこもりの存在がある。こうした現代に比べ、江戸という時代は実に不便極まりない。しかし、共同の井戸もその周りで交わされる井戸端会議も、そして国としての鎖国体制も、かえって人間関係の濃密さと互いの助け合いを生み出していたことにあらためて思いを致したい。
  
(所感)人間関係の濃密さが招く煩わしさという側面もまた論点になろう。どんな時代も人は不満と不安を抱え理想を求め続けてきたのではあるまいか。
 
 

 
 2 男子 R.F 除夜の鐘

 
驚くべきことに、お正月を迎える大事な習慣であったはずの除夜の鐘が、「うるさい!」という理由から廃止されるというニュースが飛び込んできた。これは鎌倉時代に中国の宋から伝えられてきた風習ときく。おそらく「うるさい!」との声の主は、現代社会の中で感じるストレスを強く感じているに相違ない。変わるべき時代にあっても変えてはならないものもある。
 
(所感)「うるさい」と声をあげる存在を通じて、そうした声を生み出してしまった社会のありように目を向けたことに大いに価値がある。
 
 

 
 3  男子 Y.K 神は死んだ。

 
神が科学によって不在となっても、人を導く指南者はあくまで人間自身である。その証拠に我々はネット上でのレビューや口コミに左右される。それだけ人は何かに依存しないではいられない生き物なのだ。今後、こうして人間の生み出したいわゆるデータこそが神のような存在感を強めていくことになろう。神は死んだ。しかし人は新たに依存する神を自ら創造しているのだ。
 
(所感)「ネット依存」が問題視される中、そもそも人は何かに寄りかからずにはいられない弱き生き物なりとは、実に目から鱗の弁論であった。
 
 

 
 4 【優秀賞】 女子 N.N 自分の偏見に気付く

 
「この国から出て行け」留学の際に年配の方から発せられたこの一言は、人種差別を実感する最初の忘れがたい経験となっている。しかし、最もおそれずにはいられないのは、「悪気のない差別」というものだ。そのとき、当人は決して相手を差別しようなどとは思っていない。その「よかれ」と思っての時に上から目線の言動にこそ私たちは注意しなければならない。
  
(所感)意識的な言動よりも無意識のそれの方がおそろしいとは、多くの哲学者、文学者がテーマとしてきた。その点で人は誰しも罪深い。
 
 

 
 5 男子 K.Y 日本の伝統文化について

 
「最低賃金を1,500円に」と書かれたビラを受け取った。賃金は都市部と地方とでは明らかに開きがある。人はどこに住まおうと、誰でも最低限人間らしく生活することが求められるはず。そのためにも、莫大な予算が必要となるが中小企業を支援したり、なにより地方の過疎化にブレーキをかけるべく地方の活性化が急務だ。ひいてはそれが日本の伝統文化の保存にも通じる。
 
(所感)それでも、人は都市に吸い寄せられる。こうした中心主義は宗教も国も越えて普遍性を保ってきた。そのことの理由を追求してみたい。
 
 

 
 6  
男子 R.S あなたは誰のために礼をしていますか?
 
「礼に始まり礼に終わる」といわれる。礼は他人のためにするものでは決してなく、あくまで自分自身の「心身をととのえる」ために行なうものであろう。心身がととのっていることで、人はいかなる場面にあっても適切な対応・対処が可能となる。目に見える姿勢のみならず心もととのえることで、私たちはよりパフォーマンスを向上させることにつながるはずだ。
 
(所感)「あたりまえ」のことが「あたりまえ」になることで、皮肉にもその精神性を見失うとはなんとも滑稽極まりないことである。
 
 

 
 7 女子 Y.T 私たち自身の判断と選択

 
SNSは便利なツールである。しかし先の熊本地震の際に流れたデマ情報にそのツイート主は逮捕され、この度のコロナウィルスに関してもすでに「嘘」の情報が流れているときく。こうしたフェイクニュースや動画を中心とした情報に対して、私たちはその現実性の薄さと匿名性ゆえに、自分自身の頭でしっかりと考え、その選択と判断を下す力を養わねばなるまい。
 
(所感)真贋を見分ける眼力は一朝一夕に手に入れることはできますまい。それ相応の学びとなにより豊かな感受性を養うことなくしては…。
 
 

 
 8 【優秀賞】 男子 T.K 面白い話

 
ネットでの調査によれば、つまらない話の筆頭は校長先生の話だそうだ。それは「長い」こと、「難しい」こと、そして「相手に伝えるという気持ちに欠ける」という3要素のせいらしい。話を面白いものとするためにも、聞き手を飽きさせないように「短めに」そして内容を理解してもらえるよう「簡単に」、そしてなにより「伝える」努力を惜しまぬことが求められる。
  
(所感)発信者側に要求される姿勢のみならず、反対にそれを聴く受信者側に求められるものはなんなのか、その視点も欠かせないだろう。
 
 

 

 
 9  男子 K.T 時間

 
今はとても便利になった。それは時間をかけずにいろいろなことができるようになったことを意味する。それにもかかわらず依然として「時間がない」という声は絶えない。これは「時間汚染にかかっている」といえまいか。つまり「時間がない」というのは大きな勘違いにすぎない。物理的にもやるべきことも、今一度一人一人が時間を無駄にしていないか見直すべきである。
 
(所感)物理的なそれと精神的な「時間」とは一致しないもの。人は平等に与えられたはずの「時間」を自分たちの心で味付けする生き物なのか。
 
 

 
10 【優秀賞】  
男子 K.T 命
 
不穏で不安が蔓延している現代。そうした中で、人々は自分の感情を素直にあらわせなくなっているのではないか。人は一人ではない。笑顔とともに時には涙することも大切だ。誰しも豊かな個性と魅力に満ちている。そんな自分自身をまずは好きになることが肝要だ。無意味な差別は無用である。それより、その時々の素直は感情をアウトプットすることがなによりである。
 
(所感)自己肯定感が低いと言われる現代日本の若者たち。果たして感情の喪失がその要因なのか。それともインプットすべき体験の偏りか。
 
 

 

11 【最優秀賞】 女子 Y.U 「違う」ということ
 
「私」と「あの子」は「ふつう」の関係だからそこに差別はない。しかし、世の中にはその「ふつう」から外れたとみるや無意識に差別意識が生まれることがある。「『残念ながら』自閉症の子です」と発言した医師がいた。それは「自閉症」を一つの個性として捉えていない社会がそう言わせているのだろう。「ふつう」とは多数派であるだけのこと。小さな違いを大切にしたい。
 
(所感)誰しもマイノリティに身を置くことに不安を覚え、その数の論理に甘え溺れていく。そうした胡座をかいた「ふつう」を見直すことから。
 
 

 
12 【特別賞】 男子 S.S 令和日本の政治

 
刻々と「シルバー民主主義」が進んでいる。2019年の統計によれば、若年層の投票率はわずかに35%とのこと。SNSの普及もあって若者たちは、生活への支障を感じず、その結果としてコミュニケーションは不足し「外」へ出ることもあえてしなくなってきてしまった。これからの高齢化社会にあって、この国の未来を担う若者として覚悟と当事者意識をもつ必要がある。
 
(所感)モラトリアムな考え方をはじめ、他人事で済ますことは、その場しのぎの逃げにすぎないのかもしれない。当事者意識は確かに覚悟を伴う。

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