見わたせば雲居はるかに雪白し富士の高嶺のあけぼのの空
源実朝 『金塊和歌集』より
太鼓の音が稽古の始まりと日の出ずるときを告げています。
折しも、理科会館からは、この時期にしかお目にかかれない「紅富士」の姿を拝むことができました。
夏の「赤富士」のそれとは異なり、下地となっている新雪のお陰で、山肌が薄く紅をのばしたように可憐なサーモンピンクに染まっていきます。
鎌倉の武人にして初の歌集を編んだ若き風流人、実朝もまた、夜明けのひとときをこの刻々と粧う「紅富士」に心奪われていたものでしょうか。
そんななか、先日までの中学3年生に続いて、「一日の長」のある高校2年生が「寒稽古」にいそしんでいます。
柔道、剣道ともに、「もののふ(武士)」のごとく猛々しき面持ちで稽古する生徒たち。
稽古を重ねるうちに肩口から立ち上る湯気とともに、幸運を呼び込むとされるこの「紅富士」にあやかるように、彼らの頬もまたしだいに紅色に染まっていくのがその真剣さを物語っているようでした。